もともとピアノとの相性も良かったのでしょう。すぐピアノが好きになり、元来真面目な性格（笑）もあって毎日練習も

したので教本もどんどん進んでいきました。しかしそれは（後になって分かることですが）ただ正しい音でリズムや拍が合っているというだけの演奏でした。残念ながら当時教えていただいた先生からは、音楽の構造や時代によるスタイルの違い、フレーズの運び方、音色の作り方、そしてそういったことを表現するための手や腕の使い方、ペダルを何のために踏むのか等々を含め「音楽を考えて、感じて、作る」というご指導が何もなかったのです。

◎も付いて順調に進むので素人の親と単純な私は何の疑いも抱かないまま時は過ぎ・・・

いつしか将来音楽を専門的に学んでいきたいと思うようになり、高校生になって大学の先生にレッスンをしていただく機会を得て、ここで大変なことになりました。バッハもベートーヴェンもショパンも弾いていたのに何も分かっていない、出来ていなかったのです。これまで何をやっていたのだろうと本当に悲しくショックでした。

ここから必死で練習して何とか志望校に合格、大学で素晴らしい恩師と出会い、さらに一から勉強し直すことになります。

この自分の経験から、小さい時に受ける指導がいかに大切であるか私は身に沁みて理解したのです。同じ思いを自分の生徒さんにはさせたくないというのが私の指導の原点です。

ただ、回り道をして練習に苦労した分、生徒さんがなぜ弾けないのか、どこで困っているのかが分かるのは、指導する上で良い部分でした。人生に無駄なことは何もないということかもしれませんね。